第１０１回 まどぎわ族

　７年前、そいつはやって来た。西暦２０００年というキリのいい年に、親方が活躍を期待してそいつを紹介した。景気さえも好転させてしまうのではと、その能力を買われていた。彼自身も自分の活躍に期待を膨らませながら、皆と仲良くやっていこうと思ったであろう。
　
　最初は彼の外見から、周りの人から「おっ」と喜ばれたり、もの珍しく見られたものだ。仕事もまあまあ普通にこなせた。でもこの世の中、非常に飽きやすい人たちがいるのも事実である。彼に能力がないわけでもないし、彼自身が悪いわけではないと思うが、他の同僚ほどの活躍は見られなくなった。しまいには、自分のところに所属されると、なるべく早く彼を他の部署へ送るように促す方々も出てきたほどである。
　
　「だって、体のサイズが私とほとんど同じでかぶってるし～、よく間違えられるし～」と樋口が言う。「ん～、オレともよく間違えられるかな。何か仕事の範囲が中途半端で、彼のせいで自動販売機の前で困っている人がいたよ」　医者である野口からもあまりいいコメントは聞かれない。　福沢は「あいつは人間じゃねえ」とまで言い出した。
　
　世の中不器用なヤツもいるが、好きでそうなったわけではない。いつでもどこでもオールマイティーに仕事ができるやつが珍しいのかもしれない。何でもできて手軽に安っぽく扱き使われるのもねえ・・・。最近キャラが薄くなったけど、彼の良き働き場所を探してあげようと明日銀行に連れていこうと思う。

　

　２０００円札よ、確かにちょっと不便だべや。